伝えたい大家族の良さと農業の良さ

 東武野田線東岩槻駅徒歩十五分。祖父・両親・夫婦・小学生二人の家族そしてパートの女性と、合計八人できりもりしています。三月から七月まで収穫するトマトとキュウリの直売がメインです。

 都市農業の特徴は、「人の往来が多い」という両刃の剣です。売ることについてはプラスですが、農業生産、農家継承、資産維持にはマイナスに働きます。意地で農業をしているわけではないのですが、今のところ家族が何とか食べていけるので続けています。

 「楽しそうですね」「おもしろそう」「私にもできそう」そう言ってもらえる農業をめざしています。

 これまでの農業、残念ながら植物に例えるなら「根」だけしか見せていませんでした。「花」を見せることがなかったし「実」なんて何処にあったんでしょう。そのために「農業」を継がないどころか「農家」を継がない例も珍しくありません。
 その大きな理由の一つが農家だけともいえる「大家族」です。若い人達は大家族の大変さを敏感に感じとっています。その上、年寄り達は「大家族」の良さを伝えてきませんでした。時代と共に変化してきた「家族観」に農家は取り残されました。それ故、大家族の大変さを本当に理解していただきたいのは、小姑でなくおじいさん、おばあさんなのです。今一度、昔は当然と思えたことが現在ではとてつもなく大変なことである時代になったということを再考していただければ、家族円満になるでしょう。

 生産手段としての田畑や、農家の苦労や経営努力よりも農地を資産としか見ない人達が確実に増えています。
 アウトドアや有機農業といった自然回帰ブームの一方で、着実に日本から岩槻から、農業が駆逐されていきます。

 週休2日、年間2000時間労働が当たり前の今、「昼は梅干し、夜は夜星」なんて自慢するほど後継者はひいていきます。しかし、やまた園芸でも2000時間越えていますし、自営業の場合労働時間と収入の比例関係も大切です。収入以上に労働時間が長いのが農家の欠点ですが・・・。
 合理性・効率性・経済性などの経営センスは当然として、しかし違った意味でお金に換算できないところが、農業の良さでもあります。そこに気づいて処方箋を見つけだせれば「やまた園芸」の近代化だけでなく、「日本人の胃袋」も安泰でしょう。

 12月。やまた園芸ではトマトの定植が終わり、キュウリの種蒔きです。

 よいお年をお迎えください。

1996.12月号「JA南彩」


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