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隣はスーパーマーケット、向かいは自動車販売店、そして後ろには建売住宅が建ち並ぶ環境に、トマトのオブジェが目印の我が家「やまた園芸」があります。混住化が進む中で、トマトとキュウリを主体にした生産直売が2月下旬から7月まで続きます。この間、地域住民の体験農業、農業研修生の受入などのイベントもあります。
私は直売農業を始めて20年になりますが、最も大切なことが「売る仕事」であるということを常に肌身で感じ続けてきました。我が家では妻が販売部門を担当しています。子供を産み育てる女性の「命、安全、安心」に対する感性は男性とは比べ物になりません。さらに、コミュニケーション感覚も優れています。毎日の接客の中で、減農薬で栽培したトマトの「安心」を送り出し、消費者の「喜び」と「ニーズ」を受け取ります。妻の担う「販売」があって初めて「生産」が成り立っています。
この考え方は、私たちの直売グループ「 CSA Iwatsuki (Community Supported
Agriculture)」では、誰もが理解する共通認識となっています。会員の経営作目は米・野菜・採卵など様々ですが直売に対する考え方はほぼ同じです。直売農業は地域の人達の支持があってこそ成り立ちます。そのためには、生産者と消費者のインターフェースとしての販売部門で得た情報を、次の生産・販売に活かして行く必要があります。ですから、CSAの会合はいつでも夫婦同伴で、販売・技術・地域の課題などを話し合い、情報交換をします。地域住民を対象にした田植えなどの体験農業の企画も、この会合から具体化していきます。私たちは、農業という生業の中で女性も男性もしっかりと自分の居場所を持っているのです。
一方、職場と家庭の区別がはっきりしない農家にあっては、生業以外の部分、つまり生活や余暇の時間をどれだけ共有できるかがとても重要だと思っています。端的なことですが、私たち4世代の家族は「家族が元気なうちに出掛けよう」を合い言葉に年2回、国内外の旅行に出掛け、家族の余暇と喜びを共有しています。こうした私たちの姿を、数年前に受け入れた農業大学校研修生のレポートには「経営と家計を分離して、給料、労働時間、休日を明確にするなど企業的な経営の中で、家族を大切にして、仕事も遊びも大切にしている。後継者が農業を継ぎやすい環境を作っている。」と私たち家族を評価しています。
しかし、仕事と遊びの狭間には、もうひとつ大きな課題が横たわっています。それは介護です。そして介護の日々は必ず訪れるのです。私の家では昨年、家族経営協定を締結しましたが、その中に「介護」の項目を設けました。妻はヘルパー2級の資格を取得するとともに、父の養子となり財産権が保護されています。財産は均分なのに介護は嫁の特権などという悪しき慣習を少しでも無くして行きたい、他の農家にも考えてもらいたいと思い、介護についての協定を締結しました。
私たち夫婦は同世代の農業仲間との週1回のバドミントンを通して、農業だけでなく、地域のこと、家族や介護のことを話し合っています。どの程度理解してもらえているかは判りませんが、とにかくお互いに聞き合える友人関係を作っています。1組の夫婦として、ひとの助けになり、支えあえる立場にあることを確かめられることが一番大切だと思います。このようなテーマを、それぞれが所属するグループ活動の中でとりあげて意見を交換し合うことで、光が見えてくるのではないでしょうか。
妻は「専業農家は家族総出で忙しくて大変、でも、仕事を分担していつも同じ目的を持ってみんな一緒に仕事ができるのが幸せ」と言いきります。最近では農家でも珍しい大家族ゆえに、男女・夫婦・親子・世代といった関係が同じエリアにあり、その関係の中に、よりよい暮らし方、生き方の相乗効果を発揮できるようなチャンスが眠っているのです。このチャンスを如何に覚醒させ手中に収めていくか。様々な社会問題について法律や制度の不備を問う前に、輝く豊かな明日をめざし、夫婦・家族さらには仲間たちと、その手がかりを見つけていきたいと思います。
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